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2009年06月10日

1Q84 BOOK1

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉
村上春樹
新潮社
本体1800円

えー、というわけで「1Q84」。
空前のベストセラーになっているようですね。
発売12日で100万部超えたとか。
すげえ。
出版社に勤めていた経験もあるので
(というか、そういう経験がなくてもたやすく想像できると思いますが)
この数字のものすごさを、しみじみ、かみしめます。
出版不況とか言われている中で、
こういう売れ方ができる作品を日本人の作家が世に出したというのは、
単純に、すばらしいことだ、という気がします。

しかもそれが、この、いろんな示唆とか暗示に富んでいる
村上春樹作品だというのは、
なかなか、かなり、すばらしいことなんではなかろうか。

私はそのくらい、村上春樹という書き手を信頼しているし、
とりあえず、この1巻目まで読んだ時点で、
この世界を100万人が共有してるのかと思うと、
なんか、うれしいような、しかしまあ、奇妙なような、
でもやっぱり、これはいいことだな、という、そんな気がしたんでした。

以下は基本的にネタバレありありの「1Q84 BOOK1」の感想、というか、
個人的、かつランダムな覚書です。

・すごく多重構造な物語だなあ、という感じ。

・主人公二人が、それぞれ三人称で出てくるというのは
村上作品に今までなかったパターンではないだろうか。

・でも、それが読んでいて、気持ちいいリズムになっていて、けっこう快感。

・「多重構造」というのは、特に、「時間」について。

・小説内の時間が、1984年と1Q84年の二重になっている、というのと同時に、
読み手にとって、その1984年が、自分自身が過ごした現実の1984年と、
おそらく無意識に(意識的に、という人もいるだろうけれど)
常に比較される、という二重性。
そして、二人の主人公(青豆、と、天吾)の間でもそれぞれ
似ているけれど、おそらくきっと別な1984年(1Q84年)が展開されている。

・このへんの時間感覚がいったいどう統合されていくかが、2巻目の読みどころ、かも。

・そうそう、多重構造なのは時間だけじゃなく、
この小説の中で、小説が書かれ、その小説がベストセラーになっている、というところ。
ふかえりの小説が売れる、ということと、この村上春樹の新刊が売れているということを
二重の現象に感じる読者はいるはず(ていうか私はそう)だ。

・多重構造、というか、対比構造、でもあるかな。

・それにしても、100万人が読んでいるそうだが、青豆の「きんたま蹴り」のくだりで
思わず顔をしかめたおじさんはいったい何人ぐらいいるんだろうか?

・天吾が小説をリライトしていく描写が、長いインタビューをテープ起こしして
まとめていく作業をしているときの自分の感覚とけっこう似ているような気がした。

・そういうふうに「自分だけがわかっていると思うような感覚」を書くのは
村上春樹の得意とするところだと思う。

・「リトルピープル」はやっぱり「やみくろ」とか「ワタナベノボル」みたいな
得体が知れない極悪なものの代名詞なんだろうか。だろうな。

・ということは、2巻目はそいつらと闘うんだろうな。

・でも、この物語は、青豆さんと天吾くんのラブストーリーとも読める。

・1巻目では、二人のつながりが徐々に解き明かされていくところに
読んでてカタルシスがありました。

・できることなら、青豆さんには、天吾くんと首尾よくめぐりあって、どうか幸せになってほしいなあ。
(なかなかそうはいかないのかもしれなのだろうが)

・これを読み始めて、夜空に月をみつけると、つい、2つないかどうか、まじまじとみてしまう。

そんじゃ、これから、2巻目、読みます!(わくわく)


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Posted by ながみねようこ at 15:27│Comments(0)新刊
 
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